二次小説【ドラえもん】~虹の彼方に<静香、二次作家への道>3~

「~虹の彼方に<静香、二次作家への道>3~」

作・Crescent



「静香ちゃん!」

玄関からのび太の声が聞こえ、静香はリビングから慌てて顔を覗かせた。

「お帰りなさい、のび太さん。あら?それは何?」

のび太が手にしている大きな箱を見て静香が首を傾げると

「何だと思う?静香ちゃん」

「わからないわ」

「開けてごらんよ」

のび太に促され箱を開けて見ると、中からはノートパソコンが出てきた。

「まぁ・・!」

目を丸くする静香に、のび太は

「静香ちゃん、自分専用のパソコンが欲しいって言ってただろう?」

「・・・」

「だから、僕からのプレゼント」

「のび太さん・・」

「僕は静香ちゃんが二次小説を書くことを応援してるからね」

「ありがとう、のび太さん」

「いつかは僕にも読ませてくれるんだろう?静香ちゃんの書いたお話」

静香は薄っすらと頬を染めた。

夫であるのび太には、恥ずかしさが先に立ち、まだブログ名もハンドルネームも教えていなかったのだ。

「少し恥ずかしいわ。それに、のび太さん、原作のドラマを見ていないでしょ?だから、きっと面白くないわよ」

「うーん、そっかぁ。でも、静香ちゃん、もう作品はアップしてるんだろ?」

「えぇ。3つくらい」

「反応はどう?」

「反応だなんて・・・。少しだけよ。拍手を少しもらえてるだけ」

「拍手?すごいじゃないか」

「ううん、本当に少ないのよ。一つのお話に5個とか、6個とか」

「すごいよ、静香ちゃん。だって5人の人が、静香ちゃんの話を楽しんでくれたってことなんだろう?」

「え、えぇ、多分。でも、わからないわ。何も分からずに押してくれた人もいるかもしれないし・・」

「そんなことはないよ。きっと皆、静香ちゃんの話を面白いと思って押してくれたんだよ」

「だとしたら嬉しいわ」

「うん」

「・・何だか、のび太さんと話してたら、お話を書きたくなってきちゃったわ」

「うん、そうしなよ。このパソコンでさ」

「えぇ、ありがとう」

静香はのび太の優しさを感じながら、パソコンに向かった。

パスワードを入れてログインすると「She's Cafe」の管理画面が現れた。

静香は今、原作のドラマの続きを創作していた。

目を閉じて、頭の中にドラマの2人を思い浮かべる。

前回からの続き・・・

ふいに頭の中の2人が動きだした。

まるで頭の中でドラマを観ているみたいに、2人がイキイキと動き話している。

静香は追いかけるように、キーボードを叩いて行った。






~続く~


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二次小説【アンとドラ】~「Solty Rain」~

「Solty Rain」

作・めろんぱんだ


縁あって「虹の国」を探す旅に出たアンとドラだったが

ドラは先を歩いていたアンの異変に気が付いた。

雨足が強まってきたのに、傘もささずに空を仰ぎ立ち止まっていたのだ。

「アン君、どうしたの、気分でも悪い?それに、何だかいつもより顔がふやけているようだけれど雨のせい?」

ドラの問いかけに、アンは力なく首を左右に振って答えた。

「体調のせいでも雨のせいでもないです。悲しくて涙が止まらなかったんです。 辛い別れがあった小さな子供たちのけなげな様子をニュースで見てあまりに辛かったんで……」

うなだれながらアンがこう呟くと、その顔を少し味見しながらドラは

「ホントだ、ちょっとしょっぱい」

と言って、傘を差しかけた。

「傍へ行って慰めの言葉をかけたいですけれど、今は言葉が見つかりません」

「それでいいんじゃないかい? そっとしておくほうが良い時もあるだろうし知らない人に声をかけられても、戸惑うだけだろうし」

「そうですね……」

「ともかく、その顔、洗うか新しい顔に替えてもらうかしたほうが良いよ」

「いや、今は……いいです。それに天然のシャワーがありますし。ドラさん、ごめんなさい、早く『虹の国』に行きたいところですのに」

そう言ってアンは傘を出、再び雨模様の空を仰いだ。

そんなアンに、ドラはやさしい笑みを浮かべて言った。

「気にしなくて良いよ、君がそうしたいなら……」

アンの顔は、涙雨でますますふやけ、いつもより一回り大きく見えた

何とかしてあげたいとドラは途方に暮れるが、今は為す術が見つからない。

そうして小一時間、二人は無言で歩いていた。梅雨時の蒸し暑さに、全身に汗がにじむ。

と、ふいに雲間から光が差してきて雨は小やみになり、涼風が吹いてきた。

「あっ、何だか西の空が明るくなってきたから、きっとすぐに雨が上がるよ」

ドラの言葉に、アンは少しだけ表情を明るくして答えた。

「ええ、きれいな虹が浮かぶと良いですね」

「きっと見えるよ。そして落ち着いたらジャムおじさんに新しい顔をもらいに行こう」

「はい……」

そう言って二人は空を見上げ、まだ見ぬ虹と、『虹の国』とに想いを馳せ穏やかに頷きあった。


 ――了――


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二次小説【ドラえもん】~虹の彼方に<静香、二次作家への道>2~

「~虹の彼方に<静香、二次作家への道>2~」

作・Crescent



「ティアドロップ」と言うハンドルネームを決めた静香は、次にブログのタイトルを考え始めた。

(何にしようかしら?)

少し見てみただけで、驚くほどたくさんのブログが世の中に出回っていることが分かり、静香は驚きを隠せなかった。

皆、素敵なタイトルを付けている。

静香は目を瞑り、意識を集中させた。

(私も何か素敵なものを・・・)

そう考えて、静香は頭を振った。

(ううん。素敵なんかじゃなくてもいいわ。背伸びしたって仕方がないもの。私らしくて、皆から親しみを持ってもらえるような・・)

ふいに静香の頭に「カフェ」と言う言葉が浮かんだ。

(カフェ、なんてどうかしら?同じ原作が好きな人同士が、お茶を飲みにくるみたいに気軽に立ち寄れて、楽しくお話出来たり、一人静かにお茶を飲めるような、そんなイメージ)

静香は手元にあったメモ用紙に思い付くままに書いて行った。

「陽だまりカフェ」「木漏れ日カフェ」「紫陽花カフェ」「雫カフェ」「雨の日カフェ」「潮さいカフェ」・・・

(あっ)

あることを思い付いて、静香はクスクスと笑った。

(「しずカフェ」なんてどうかしら?静香のカフェ。でも、そうしたらすぐに私ってバレてしまうわよね)

静香はメモを前に考え込んだ。

(どうしよう。のび太さんに相談してみようかしら)

そう思いつつ、やっぱり自分で決めたい気持ちもある。

さんざん迷って「紫陽花カフェ」に決めかけ、だけど、どうしても「しずカフェ」も気になった。

(しずカフェ、シズカフェ、シズ、シズ・・・)

「あ」

今度は声が出ていた。

(シズを『She's』にしたらどうかしら?『She's Cafe』と書いて『しずカフェ』。文法的にはおかしいかも知れないけど『彼女のカフェ』。私でもいいし、読んでくれた人でもいい。彼女のカフェ、彼女の話・・・)

ハンドルネーム「ティアドロップ」、ブログタイトル「She's Cafe」───。

入力を終え、静香は小さな吐息を漏らした。

まだ誰にも知られていない、静香のブログが誕生した瞬間だった。





~続く~


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二次小説【ドラえもん】~虹の彼方に<静香、二次作家への道>1~

「~虹の彼方に<静香、二次作家への道>1~」

作・Crescent



夫であるのび太から「今日は遅くなるから、静香ちゃんは先に休んでて」と言うメールが入ってきた。

照明をぐっと落とした一人きりの部屋で、静香はパソコンの前に座った。

夕方から降りだした雨の音が部屋の中にまで入り込んできている。

あの日───

静香がドラマを見て、その結末に涙を流していた日。

のび太に「その先の2人の未来を静香ちゃんが作りだしてあげたらいいじゃないか」と言われてから、ずっと静香の心にはさざ波のような波紋が広がっていた。

(私が、あのドラマの未来を作る・・)

怖いような、楽しみなような波紋だった。

ネットを検索してみたら、すでにそう言うことを書いている人がたくさんいることを知り、静香は驚いた。

静香が知らないだけで、とっくに「二次小説」と言う名前で、多くの人が「物語の未来」を作っていたのだ。

皆、自分のブログを持ち、ハンドルネームと呼ばれる筆名を作り、ネット上で公開している。

ハンドルネームなんて恥ずかしいけど「静香」と本名を書く方が恥ずかしい───

静香は目を瞑り考えた。

(何にしようかしら?)

雨の音が聞こえる。

(レイン、なんてどうかしら?)

ううん、と静香は頭を振った。

(ちょっと違う気がするわ)

しばらく目を瞑り考えていた静香は、ふと立ち上がると窓を開けた。

雨の匂いが部屋に流れ込んでくる。

屋根から伝う雫が、静香の目の前を一滴二滴と落ちている。

(雫・・。「しずく」なんてどうかしら?「静香」とも少し似ているし)

静香は自分の思い付きに心弾む思いでパソコンの前に座り直し、そこで、またふとあることを閃いた。

(「しずく」を英語にしたら何て言うのかしら?)

検索してるうち「ティアドロップ」と言う言葉に行きついた。

(ティアドロップ・・。涙のしずく・・)

ティアドロップ、ティアドロップ・・・と、静香は心で繰り返した。

読んだ人が優しい涙を流してくれるような話を書きたい。

暖かくて、柔らかくて、読み終えた時に幸せになってくれるような・・・

静香は画面のハンドルネームを書き込むスペースに「ティアドロップ」と書き込んだ。

キーボードを打つ指先が少し震えていた。





~続く~


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韓ドラ二次小説【~SP 大統領~】

~SP 大統領~

作・イニシャルA



~SP 大統領~


ノックの音がした。

「どうぞ。」

返事をすると、入って来たのは秘書室長だった。
私は手許の書類に視線を戻し、執務を続ける。

彼は私のデスクに歩み寄って来て、目の前に立った。

「大統領、ご存知ですか?」

秘書室長の差し出した一枚の紙。

『花より青瓦台』

ネットニュースをプリントアウトしたらしい一枚の紙。

「何です?・・・これは?」

「大統領警護官が、イケメンすぎると話題になっています。」

「・・・それで?」

「何にせよ、国民の関心が寄せられていると言うことです。」

そんなことは言われなくとも、よく分かっている。


その日のスケジュールを確認して、秘書室長は執務室から出て行った。


ある日の視察を終えて官邸に戻った時、車のドアを開ける警護官に目が留まった。


あの、彼か?
・・・なるほど、イケメンだな。


ツカツカと建物に向かって歩いていたのだが、私はふと立ち止まって彼を振り向いた。
一瞬、彼は驚いた顔をしたが、すぐに辺りを警戒する。優秀さが窺い知れた。

手招きをすれば、身のこなしも鮮やかに歩み寄って来る。

「何でしょう?」

「ネットニュースで見たよ。・・・写真よりいい男じゃないか。」

「はあ・・・」

私は彼の肩をぽんぽんと叩いて、また歩き出した。


顔で、大統領を護っているわけではないだろう。


誇り高き、大統領警護官。
私はその『誇り』に相応しい大統領であらねばならない。


国民の為に・・・。

彼の為に。



fin


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二次小説【ドラえもん】~「そんなあなたが好き」~

「~そんなあなたが好き~」

作・ イニシャルA



のび太さんは少し慌て者だ。

「しずかちゃん、僕のメガネ知らない?」

「・・・頭の上のは、なあに?」

彼は自分の頭に手をやって、あっ、なんて言っている。
そして、えへへ、なんて笑うのだ。


のび太さんは怖がりだ。

「DVD、借りて来たよ。」

「・・・それ、観るの?」

『ゾンビ』なんてチョイスして来て・・・

「うわぁ!しずかちゃん、見ない方がいい!」

自分の目だけでなく、私の目まで隠すのだ。


のび太さんは頼りない。

「しずかちゃん、トイレに付いて来てくれない?」

『ゾンビ』なんて観るから・・・。

私はトイレのドアの前で欠伸を噛み殺した。


でも、彼は優しい。

「しずかちゃん、これ見て!」

小さな球体が二つ重なったような、雪だるまみたいなフォルムのサボテン。

「ドラえもんだ!」

大喜びで買い込んだ。

ネットで『サボテンの育て方』なんて調べて、心を込めて世話をしている。


慌て者で、怖がりで、頼りないけど・・・
彼は優しい。

「のび太さん、あなたが好きよ。」

照れたように頭を掻いて

「僕も。」

彼は嬉しそうに微笑んだ。


fin


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二次小説【ちびまる子ちゃん】~「色鉛筆の約束」~

「色鉛筆の約束」

作・ 椿冷奴




「ちょっと、まる子、あたしの色鉛筆持ってったでしょ?明日、社会科で使うんで無いと困るのよ!」

お姉ちゃんの剣幕に驚いたまる子は、色鉛筆の箱を両手で捧げ持って謝った。

「あ、お姉ちゃん、ごめん、ごめん。同じ色ばかり使うんで、足りない色があって」

「また絵を描いてるの? うーん、いろいろ問題アリのあんただけれどやっぱ絵は上手いね」

まる子がすぐに謝ったので怒りがおさまった姉は、一転して優し気に尋ねてきた。

「これは虹の絵かな? 足りない色って、ピンク?」

「うん、ピンクレディーのピンク、百恵ちゃんの“桃”色だから、つい使い過ぎちゃって」

ちょっと呆れ気味にため息を一つ吐くと、姉はまた口を開いた。

「百恵ちゃんの“もも”は果物とは違うけれど。あ、ピンクがない時は赤色を薄く塗って白色を上から重ね塗りをするといいわよ」

「ホント? あ、ホントだ! なんか、虹の色の境目っぽい感じも却ってよく描ける!」

「良かったね。じゃ、色鉛筆返してくれる?」

「やっぱ、ケチ。でも、重ね塗りは参考になったよ、ありがとう」

「あんたがお礼を言うなんて、すごく珍しいね。もし、重ね塗りのおかげで絵がもっと上手になって超有名になったら、この借りは何倍にもして返してね」

「はい、はい、はい。やっぱあんたはケチんぼだね。もし万一、超有名になったら色鉛筆の何万倍もお礼するよ」

「ホント? 約束だからね」

「おう!」

……それから十数年後、まるちゃんはお姉ちゃんに高額のお礼をする羽目になったとか。

ともかく、良かった良かったということで、おしまい。


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2名からコメントが届いています。

「どの作品にも書き手さんの人となりが出て面白いなと読み手専門としては思います。
ドラえもんの中の登場人物や、アンパンマンの優しい雰囲気もあるのでしょうけれど、書かれた作家さんの性格や、雰囲気も作品に反映されているなと感じました。」

「しずかちゃんの哀しい想いが昇華されて素敵なお話が出来上がることを願っています。Crescentさんのお話は、いつも優しさにあふれていて素敵ですね。^^また、書いてくださるのが楽しみです。」

作家への励みとなる言葉をありがとうございます。



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二次小説【ドラえもん】~「バージンロード」~

「バージンロード」

作・ Crescent



結婚行進曲の中、静香は父親とバージンロードを歩く。

一歩、一歩、と足元を確かめるような足取りで───

少し先には夫となるのび太が待っている。

緊張のためなのか普段よりも硬い表情をしているのが分かり、静香はくすっと笑った。

───やっぱりのび太さんだわ。

のび太の所に着き、静香はそっと父親の腕から手を外した。

その手をのび太に伸ばしかけた次の瞬間。

のび太は突然、両手で、静香の父親の手を取っていた。

あっけに取られる父親の手をぎゅうぎゅうと握りしめては、涙を流している。

───のび太さんったら・・

どうしてあなたが私より先に泣くの。

どうしてあなたはそんなに素直なの・・・

静香の胸に温かな気持ちが広がって行く。

のび太さん、私たち、きっと幸せになれるわ。

静香は笑う振りをしながら、そっと涙を拭ったのだった。




~fin~


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二次小説【サザエさん】~「母さんの心配事」~

平成版サザエさん「母さんの心配事」

作・波野ヒラメ




それは一枚の新聞広告から始まった。

「一軒丸ごとリフォーム! 水回り、床張り、壁紙替え込み、工期8日間! か」

サザエさんの母、フネさんはちゃぶ台の上に新聞広告チラシを投げ出して、ため息を吐いた。

梅雨入り間近の室内は、木製の窓枠のゆがみの隙間から思いがけない涼風が吹き込んでくる。

昭和時代の理想的家族といわれた磯野家だが、時代の流れに付いていくのはかなり大変だ。

夫の波平の定年退職までにはあと数年、長男のカツオと次女のワカメはまだ小学生である。

気を取り直して再びチラシを手に取り、数枚やり過ごすと再び気になる内容のものが見つかった。

「お惣菜店のパート募集、時給970円以上! いいわね、これ。あ、でも必ず土日勤務か……」

頭の中で、一家団欒と収入とを両天秤にかけてみる。
そして、頭を左右に振って思考を追い払ってしまう。

「どうしたの、母さん、難しい顔をして?」
「ああ、サザエ、何でもないのよ。今夜のおかずを考えていて……」

しかし長女のサザエは目ざとく母の手元にあるチラシに目をやり朗らかに口を開いた。

「ああ、ここのお惣菜とっても美味しいのよね。よく、タラちゃんに手がかからなくなったらパートに来ないかって誘われるのよ」

「そうなの? でもどうして美味しいって知ってるの?」

「商店街へ買い物に行く度に試食を頼まれるのよ。

『サザエさんなら、お母さんの美味しい料理を食べ慣れているだろうから舌が信用できるし、何といっても対人能力が天才的!』ですって」

「対人能力……確かにね」

「そお?」

嬉しそうに答えるサザエに、微笑み返してフネさんは答えた。

「あんたの役に立つように、今夜も腕を振るうわね。あ、タラちゃんの世話が必要になったら、私もワカメもいるから大丈夫よ!」

「ホント? 母さんありがとう。タラちゃんの様子を少しずつ見ながら、マスオさんにも相談して決めるわね。その時はよろしく!」
 
スキップするかのように上機嫌で去っていくサザエの後姿を見送りながらまたため息を一つ。
「適材適所」。そんな言葉が頭の中に浮かんだ。

「さあて、今日も頑張りますか!」

そう宣言して、フネさんは割烹着の袖をまくり上げた。



おしまい。



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二次小説【ドラえもん】~「結婚前夜」~

「結婚前夜」

作・ with you..



明日が結婚式と言う日の夜、静香は家族との夕食を終えると部屋に戻ってきた。

パパ、今までありがとう……

夕飯の後に言おうと思っていたのにどうしても言い出せなかった。

きっとパパは泣いてしまう。
そしたら私も泣いてしまう。

静香は滲む涙を指先で拭うとスマホを手に取った。


---やあ、静香ちゃん。

「のび太さん」

--どうしたの?

静香の声の些細な変化にのび太は気付き、声のトーンを落とした。

「のび太さん。私、おかしいの。幸せなのに涙が出るの」

--静香ちゃん。

「明日の結婚式が楽しみなのに、パパの顔が見れないの」

--静香ちゃん。ぼくは静香ちゃんをお父さんからもらおうなんて思ってないよ。だって静香ちゃんは静香ちゃんだからね。

(私は私、私は私、私は私…)

静香は心の中で何度も唱えてみた。

「のび太さん、ありがとう」

静香は自分の胸に手を当てた。
胸に温かな安堵感が広がって行く。

私は明日には「野比静香」になるけど、パパの娘であることに変わりはないから……



--翌朝--


先に式場入りするために静香が支度をして家を出ようと玄関で靴を履いていると、奥から父親が見送りに出てきた。

「後で行くからな」

静香は靴を履き終えてバッグを持ち直すと

「行ってきます。パパ、これからもよろしくね」

晴れやかな笑顔で言った。

「もちろんさ、静香。さぁ、行ってきなさい」

「はい!」

静香は玄関を開け外に出ると、のび太が待つ式場へと軽やかな足取りで向かったのだった。




--完--



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